「電動歯ブラシって、買う価値ありますか」。検診のあとに一番よく聞かれる質問です。答えは人によって違うので、私が診療室で判断している基準をそのまま書きます。先に言うと、電動が必要かどうかは機種の性能ではなく「今のあなたの磨き方」で決まります。
歯科医師の見解:当てられる人には必要、当てられない人にはまだ早い
電動歯ブラシは、毛先が当たっている所は手磨きより確実にきれいになります。ただし、当たっていない所の汚れはまったく落ちません。だから私は「電動にしますか」と聞かれたら、まず染め出し(磨き残しを赤く染める検査)で、その人が歯ブラシを適切な場所に当てられているかを見ます。当てられる人は電動に変えるだけで次の検診の赤が目に見えて減ります。当てられない人は、先に当て方を覚えないと、電動にしても赤い場所は同じままです。
機種を聞かれたら、正直に言えば音波式を一番にすすめています。当てるだけで磨けるので、力や動かし方の癖に左右されにくいからです。自分でかなりきれいに磨けている人なら、音波式にこだわらず普通の電動歯ブラシで十分です。
電動歯ブラシが「必要」な人
- 検診で磨き残しを毎回指摘される人。特に歯と歯ぐきの境目が赤く染まる人。
- 歯磨きで歯ぐきから血が出る人。出血の多くは磨き残しか押し付けすぎが原因で、当てるだけの音波式に変えると2〜3週間で落ち着くことが珍しくありません。
- 力を入れて磨く癖がある人。手磨きで歯ぐきが下がったり知覚過敏が出たりしている人は、過圧を知らせるセンサー付きの機種で癖ごと直せます。
- 矯正装置やインプラント、セラミックが入っている人。装置や被せ物の周りは磨き残しやすく、長持ちさせるには清掃の底上げが要ります。
- 握力が落ちてきた人、手の細かい動きが難しい人。動きを機械に任せられます。
電動歯ブラシが「まだ要らない」人
- 手磨きで染め出しがほとんど赤くならない人。実際にはかなり少数ですが、この人は今のやり方を変える必要がありません。
- 歯ブラシを当てる場所が分かっていない人。電動にしても当たらない所は落ちないので、先に歯科衛生士に当て方を教わる方が結果が出ます。
- 「買えば勝手にきれいになる」と思っている人。電動歯ブラシは当てた所しか磨けません。1か所ずつ止めて当てる、という使い方を覚える前提です。
電動歯ブラシでできること、できないこと
できることは3つです。当てた場所の汚れを手磨きより確実に落とすこと。押し付けすぎを機械側で止めること(センサー付き機種)。2分のタイマーで磨き時間の不足を防ぐこと。
できないことも3つあります。当たっていない場所の汚れは落ちません。歯と歯の間の奥までは届かないので、フロスか歯間ブラシは別に必要です。歯そのものを白くする漂白効果はありません。着色を落として本来の色に戻すまでが限界です。
費用の目安
本体は1万円前後の定番機で十分です。5,000円以下の機種は振動もパワーも別物で、「電動なのに落ちない」と感じて手磨きに戻る人が多い。替えブラシは純正で1本1,000円前後、3か月交換で年4,000円ほど。虫歯1本の治療費(保険でも数千円、セラミックなら5万円超)と比べれば安い投資です。
迷ったら音波式のソニッケアーの定番機で間違いありません。音波式と回転式の違いはソニッケアーとオーラルBの比較に、機種ごとの向き不向きは電動歯ブラシの選び方にまとめています。
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買ったあとに守ること
- 押し付けない。毛先が広がるほどの力は逆効果です。
- 1か所に2〜3秒止めてから隣へ。手磨きのようにゴシゴシ動かさない。
- フロスか歯間ブラシを併用する。順番は電動歯ブラシとフロスの順番で説明しています。
- 替えブラシは3か月。毛先が開いたら前倒しで替える。
よくある質問
Q. 子どもにも電動歯ブラシは必要ですか。
小学校低学年までは、仕上げ磨きを親がする方が確実です。電動を使うなら、子どもが自分で当てられるようになってからで十分です。
Q. 電動にしたら歯科医院での定期検診は要らなくなりますか。
要ります。電動歯ブラシで落とせるのは柔らかい歯垢だけで、固まった歯石は落ちません。磨き残しの場所も自分では分からないので、3〜6か月ごとの検診で確認してください。
Q. 音波式と超音波式は違いますか。
家庭用で売られている「超音波」表記の多くは、実際には音波式と同じ振動の仲間です。歯周ポケットの中を超音波で掃除するのは歯科医院の器械で、家庭用歯ブラシではありません。表記より、当て方と替えブラシの入手しやすさで選んでください。
まとめ
電動歯ブラシが必要かどうかは、機種ではなく今の磨き方で決まります。当てられる人が使えば手磨きより確実にきれいになる。当てられない人は、先に当て方を覚える。迷ったら音波式の定番機を1万円前後で買い、押し付けず、1か所ずつ止めて、フロスを併用する。それで十分です。
執筆・確認:歯科医師 中田雅昭(運営者情報・編集方針)
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