「歯列矯正って総額いくらかかるんですか」。矯正の相談で最初に出る質問で、そして相談を受けている歯科医師の私が一番ずれを感じる質問でもあります。相場を少し安く見積もっている人が多いのです。装置の値段だけ見て「50万円くらい」と思って来られ、検査料・調整料・保定装置まで足した総額を聞いて表情が変わる。この記事では、4種類の装置の相場を「総額」で示し、月々の負担、安くするコツ、そして子どもの矯正でよく誤解されている一期治療・二期治療の話まで、診療室で説明している順番で書きます。
歯科医師の見解:相談に来る人の多くは相場を「少し安く」見ている。装置代の他に3つの費用がある
矯正の費用は「装置代」だけではありません。精密検査料(3〜5万円)、月ごとの調整料(3,000〜8,000円、2年通えば10〜20万円)、治療後の保定装置代(3〜6万円)が別にかかる医院が多い。装置代70万円と聞いて70万円で終わると思っていると、総額は90万円を超えます。だから私は見積もりを「総額制か、処置ごとの加算か」から確認するよう伝えています。
もうひとつ、子どもの矯正で誤解が多いのが「一期治療で終わる」と思っていること。一期治療(顎の成長を使う小学生の時期の治療)は土台を整える段階で、永久歯が生えそろった後に二期治療(本格矯正)が必要になる子が少なくありません。一期30〜50万円で終わると思っていたら、二期でまた50万円以上、という流れは珍しくないので、最初に「二期まで含めた総額」を聞いてください。
先に結論:4種類の装置と総額の目安
| 装置 | 装置代の相場(全体矯正) | 検査・調整・保定を足した総額の目安 | 期間 | 目立ちにくさ |
|---|---|---|---|---|
| ワイヤー矯正(表側・金属) | 60〜100万円 | 80〜120万円 | 1.5〜3年 | 低い |
| ワイヤー矯正(表側・白い装置) | 80〜120万円 | 100〜140万円 | 1.5〜3年 | 中 |
| マウスピース矯正(部分) | 10〜50万円 | 15〜60万円 | 3か月〜1.5年 | 高い |
| マウスピース矯正(全体) | 60〜100万円 | 70〜120万円 | 1〜2.5年 | 高い |
| 裏側矯正 | 110〜170万円 | 130〜190万円 | 2〜3年 | とても高い |
| 部分矯正(前歯だけ・ワイヤー) | 10〜40万円 | 15〜50万円 | 3か月〜1年 | 方法による |
数字は2026年時点の一般的な相場で、地域と医院、歯並びの難しさで動きます。右から2列目の「総額の目安」が、実際に払う金額に近い方の数字です。
装置ごとの費用と、向いている歯並び
ワイヤー矯正(表側)
歯の表に装置をつけてワイヤーで動かす、一番歴史のある方法です。抜歯が必要なケース、骨格のずれを伴うケース、奥歯の噛み合わせを精密に作るケースまで対応できる守備範囲の広さが強み。金属の装置で60〜100万円、目立ちにくい白いセラミックの装置にすると80〜120万円が相場です。月1回の調整で通院が必要で、調整料が別の医院では2年で10〜20万円が上乗せになります。
マウスピース矯正
透明なマウスピースを1〜2週間ごとに交換して動かす方法です。前歯だけの部分矯正なら10〜50万円、全体を動かすなら60〜100万円。月額制(月1.7万円前後〜)を出しているブランドも増え、まとまった現金がなくても始めやすくなりました。ただし安いプランは対応できる歯並びが限られます。「前歯のガタつきが軽い」「すきっ歯」「軽い出っ歯」は向きますが、抜歯が要るケースや奥歯を大きく動かすケースは追加治療か他の装置になります。装着時間を守れるかどうかで結果が変わる装置なので、向き不向きはマウスピース矯正の比較記事に分けて書きました。
裏側矯正
装置を歯の裏側につけるので、外からほぼ見えません。技術料が高く110〜170万円と一番高額。上だけ裏側にして下は表側にするハーフリンガルなら90〜140万円です。「矯正中と絶対に気づかれたくない」職業の人には根強い需要があります。裏側は舌に当たるので慣れるまで話しにくく、症例数の多い医院を選ばないと仕上がりに差が出ます。
部分矯正
前歯6本だけなど範囲を絞る矯正で、10〜40万円、3か月〜1年。費用も期間も軽い分、噛み合わせ全体は触らないので、向く歯並びは限られます。「結婚式までに前歯だけ」「昔の矯正の後戻りを直したい」というケースでよく使います。
子どもの矯正:一期治療と二期治療を分けて考える
子どもの矯正は2段階に分かれています。ここを一段階だと思って相談に来る親御さんが本当に多い。
一期治療は、乳歯と永久歯が混ざっている小学生の時期に、顎の成長を使って土台を整える治療です。床矯正やプレート、拡大装置などを使い、費用は30〜50万円が目安。目的は「歯を並べる」ではなく「永久歯が並ぶスペースを作る」「顎のずれを小さくする」ことで、これによって将来の抜歯を避けられる可能性が上がります。
二期治療は、永久歯が生えそろった中学生以降に行う本格矯正で、大人と同じワイヤーかマウスピースを使います。費用は50〜100万円。一期治療をしていた場合は差額で受けられる医院が多いですが、それでも合計は80〜130万円になります。
一期治療をすれば二期治療が要らなくなる子もいますが、全員ではありません。「一期をやったのに、また何十万円もかかるとは聞いていなかった」という声を避けるために、最初の相談で「二期まで進んだ場合の総額と、一期で終わる見込み」を聞いてください。答えが曖昧な医院は避けた方がいい。
月々の負担はいくらになるか
総額100万円のワイヤー矯正を、医院のデンタルローンで36回払いにすると月3万円前後(金利による)。マウスピース矯正の月額制プランは月1.7〜3万円が中心で、部分矯正の月額制なら月3,000〜4,000円台から始められるブランドもあります。月額の安さで選ぶときは、支払いの総額と回数、途中でやめた場合の扱いを契約前に確認してください。「月々3,000円」の裏に「総額45万円・36回」があるのは普通のことで、それ自体は問題ありませんが、知らずに契約すると後で驚きます。
費用を抑える4つのコツ
- 総額制の医院を選ぶ。処置ごとの加算だと、通院が長引くほど調整料が積み上がります。同じ装置代なら、総額制の方が安く終わることが多い。
- 医療費控除を使う。噛み合わせの改善が目的の矯正は控除の対象です(見た目だけの目的は対象外)。所得税率20%の人なら、100万円の矯正で18万円前後が戻ることがあります。領収書は必ず保管してください。子どもの矯正はほぼ対象になります。
- 部分矯正で済むかを先に診てもらう。前歯だけ整えたい人が全体矯正を契約する必要はありません。逆に、部分矯正で済まない歯並びを安いプランで始めると、途中で全体矯正に切り替えて二重に払うことになります。
- むし歯と歯周病を先に治す。矯正中は歯が磨きにくく、むし歯の治療が割り込むと期間も費用も延びます。歯周病があるまま矯正すると骨が減って歯を失うこともあるので、これは費用以前の順番です。
費用を抑えてマウスピース矯正を始めたい人へ
軽い歯並びの乱れで、費用を抑えて始めたい人がよく相談に来るのが、月額制のマウスピース矯正です。どちらも無料相談で自分の歯並びが対応範囲かを確認できるので、契約前に「自分のケースが部分矯正で終わるか」「総額と回数」の2点を聞いてください。
(PR)hanaravi(ハナラビ)|月々3,000円台から・歯科医師監修のマウスピース矯正の無料診断を見る
(PR)キレイライン矯正|前歯中心の部分矯正・全国の提携医院で初回検診を受ける
後悔しないための確認事項
矯正の仕上がりは、装置の種類より担当医の経験で決まります。確認するのは4つ。日本矯正歯科学会の認定医・専門医がいるか。治療前後の写真を見せてくれるか。総額制か処置別か料金体系を明示しているか。抜歯の要否について複数の選択肢を説明してくれるか。
もうひとつ、一番後悔が出るのが保定です。歯を動かした後、骨が安定するまで最低2年は保定装置(リテーナー)を使います。ここをさぼると、100万円かけた歯並びが2〜3年で崩れます。リテーナーは矯正の一部だと思ってください。
よくある質問
痛いですか?
装置をつけた直後と調整の直後の数日は痛みや違和感があります。マウスピースは締め付けられる感じ、ワイヤーは歯が浮く感じで、3〜5日で慣れる人がほとんどです。1週間以上続くなら装置の調整が必要なことがあるので、早めに連絡してください。
期間はどれくらいですか?
部分矯正で3か月〜1年、全体矯正で1.5〜3年。マウスピースは1日20時間以上の装着を守らないと延びます。治療後の保定が2年以上あるので、付き合いは合計5年ほどと考えてください。
何歳から始められますか?
一期治療は5〜6歳から、二期治療(本格矯正)は永久歯が生えそろう12歳前後から。大人に年齢の上限はなく、歯と歯ぐきが健康なら50代・60代から始める人もいます。
安いプランと高いプランの違いは何ですか?
対応できる歯並びの範囲です。安いプランは前歯の軽いずれが対象で、奥歯の噛み合わせや抜歯が必要なケースは対象外。自分の歯並びがどちらかは診断でしか分からないので、金額を見る前にカウンセリングを受けてください。
失敗したらどうなりますか?
仕上がりに納得できないときは、まず担当医に再調整を相談。解決しなければ別の医院でセカンドオピニオンを。契約前に、途中解約や再作製の規定を確認しておくと安心です。
まとめ
矯正の費用は装置代に検査・調整・保定を足した総額で見る。相談に来る人の多くはこれを少し安く見積もっています。子どもの矯正は一期と二期の2段階で、一期で終わる子ばかりではない。軽い歯並びなら月額制のマウスピース、抜歯や骨格のずれがあるならワイヤー、見せたくないなら裏側。装置の選び方はこれで足りますが、自分の歯並びがどこに入るかは診断でしか分かりません。まず無料相談で「総額」と「対応範囲」の2つを聞いてから決めてください。
執筆・確認:歯科医師 中田雅昭(運営者情報・編集方針)
歯科医師確認:2026年9月(総額の見方、一期治療・二期治療、月々の負担、費用を抑えるコツ)
※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。費用・期間は医院と症例で異なります。


コメント